2024年度運営委員の声 2024年9月 津田真人先生
2024年9月度 ポリヴェーガル理論の基礎と臨床への視座
2024年9月7日(土)にはTA研究部会2024年度第3回を開催しました。
当日は、心身社会研究所自然堂 (じねんどう)治療室・相談室主宰の津田真人先生をお招きし、「ポリヴェーガル理論の基礎と臨床への視座~こころ・からだ・社会の複眼的な視点から、トラウマに向き合う最新アプローチ~」と題してお話しいただき大変好評でした。
ポリヴェーガル理論は自律神経の新しい理論、トラウマの最新理論として、今では世界的に話題となっています。同理論は神経解剖学や神経生理学を前提とすることから、難解としても知られる理論ですが、当日は津田真人先生にわかりやすく解説していただきました。
スチーブン・ポージェス博士は1994年10月8日、精神生理学会会長に就任の際、記念講演にて初めて新しい自律神経の理論として、「ポリヴェーガル理論」を発表しました。提唱されたのは「自律神経は三層構造にて、副交感神経の80%を占める迷走神経は2種類ある。それは、背側迷走神経複合体と腹側迷走神経複合体である。」という内容でした。日本でポリヴェーガル理論が紹介されたのは、7~8年とのことです。
【幹事感想】
印象的だった項目や内容は以下のとおりです。
・自律神経は脳と体の仲立ちをしている。この研究をポージェスは続けてきた。
・自律神経を整えていくことにより脳と体も変わっていく。
・心臓の鼓動には「ゆらぎ」があり、その巾が大きいほど健康と言える。
・迷走神経はこの「ゆらぎ」と関係がある。
・ミクロな不整脈は正常(RSA)。
・心拍変動の大きい年齢層は赤ちゃん。胎児33週目から心拍数が計測できる。
・脳の略図、延髄の模式図等より各神経などの説明を受ける。
・魚類、両生類、爬虫類は1種類だが、哺乳類は2種類の迷走神経がある。
・背側迷走神経は古代からあるが、腹側迷走神経は新しい、呼吸中枢の一部。
・迷走神経のおかげで生きていける。例えば、空腹や痛み、利尿等。
・人類の先祖は水中で生きてきた名残りに鰓弓神経。
・魚の神経の並びと人の神経の並びが同じ。
・人間の鰓は退化したが、耳の穴はその名残り。
・深呼吸で吸う→脈拍数大、吐く→脈拍数小。
・3つの自律神経を認識できることが大切。典型的生理反応の例示あり。
・オポッサムの死んだふり、背側迷走神経のなせる業、人間はまねできない。
・安全・耐性領域、トラウマの人は低覚醒or高覚醒領域に留まったまま。
・危機に反応→交換神経+背側迷走神経。
・危機が去っても戻れないのが→トラウマ。野生動物にはありえない。
・トラウマは背側迷走神経複合体の「不動化」システムが作動。
・凍りつき(フリーズ)→交感神経+背側迷走神経のブレンド。
・虚脱(シャットダウン)→背側迷走神経。
・腹側迷走神経+背側迷走神経ブレンド→「愛」、愛着、親密、共感、オキシトシン
・腹側迷走神経+交感神経ブレンド→あそび
・臨床への視座
腹側迷走神経による「安全」が重要、治療につながる。
・セラピーが到達すべき目標
①世界と柔軟に関与(腹側迷走神経)
②他者といつも恐怖なしに不動化できる(腹側迷走神経+背側迷走神経)
③自由に可動化(腹側迷走神経+交感神経)、安全・安心、自由な関わり。
(担当幹事 吉田宏 杉江伸一朗)
以上