2022年度運営委員の声 2022年7月 岡田美智男先生
【岡田美智男 先生】
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2022年7月9日(土) には、豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 教授の岡田美智男先生をお迎えし、「<弱いロボット>的思考のすすめ~お互いの<弱さ>を補いあい、<強み>を引き出し合う関係~」と題してお話しいただきました。
運営委員(幹事)感想は以下のとおりです。
【弱いロボットは「あるがまま」に通じる】
7月度のTA研究部会は岡田美智男先生(豊橋技術科学大学教授)の『<弱いロボット>的思考のすすめお互いの<弱さ>を補いあい<強み>を引き出し合う』でした。
今年3月のNHK BSプレミアムでも紹介されましたが、数々の「弱いロボット」、どこか不完全だけれど可愛いほっておけない姿が笑いを誘います。
・よたよた歩くゴミ箱ロボット。手がないので自分ではゴミを拾えないので、そばにいる人が堪りかねてごみを入れてあげる。優しい気持ちになります。
・「毎日しんどいんや」と言うと「毎日しんどいんや」と温かみのある声でリピートする豆腐型ロボット。
・とぼけた顔でたどたどしく桃太郎などの物語を語るロボット。「川上からどんぶらこと流れて来るのはえーと」と詰まると周りの幼児が「桃!」と教えて上げる。
面白いロボットだなあと最初は思っていましたが、意外と奥が深い。元々はNTTの研究者だった岡田先生はロボットと人とのコミュニケーションに関心を持たれました。
そしてロボットを研究するうちに自己完結、完全無欠を目指す<個体能力主義的なアプローチ>と一人では出来ない周りを味方につける<関係論的アプローチ>、この二つのアプローチを見つけられました。
これは人の進化=乳幼児の進化にも関わるものです。乳幼児は一人では何もできない存在ですが、養育者の手助けを借りてミルクを手に入れたり移動したりしています。一人で完全に自立するのではなく、周囲に依存し、環境と関わった方が成長するという考え方です。お互いの弱さを補いお互いの強さを引き出し合う関係と言えます。
このお話を伺い、弱いロボットと関わることはTA(交流分析)で言うI am OK, You are OKの関係なんだと思いました。関わる中で相手をいつくしむNP(養育的)が出て来るのだと思いました。
またブリコラージュと言う考え方も印象的でした。文化人類学者のレヴィ・ストロースが紹介した考え方で「あり合わせのものをかき集めて当面の課題を解決する」意味です。
この反対が合理的・科学的なエンジニアリングで、論理的に課題を分析設計し問題解決を図る予定調和、自己完結です。 それに対してブリコラージュはプランを持たず、「あるがまま」で自然。とりあえず動いてみてその場の出会いを上手に活かす。
TAで言うFC(自由な子供)とA(成人)のようで、ビジネスはエンジニアリングに偏りがちですが、ブリコラージュ的生き方が出来ると楽しいだろうなと感じました。
弱いロボットと関わることで自分の生き方を深く考えた一日でした。
(7月幹事 藤原 勝、和智久二夫)
【岡田先生に講師をお願いした理由】
<弱いロボット>の岡田先生をセミナーに、と思った理由を書きます。
ホテル業界に長年勤務していた私にとって、ロボットの存在は身近に感じられるものでした。客室に荷物や備品を正確最短ルートで届けられるロボット。チェックインカウンターで挨拶する恐竜型ロボット。レストランで配膳するロボット等など。最近は調理も出来るロボットが試運転中とも。
労働集約産業のホテル業界では、いよいよロボットに仕事を奪われていくのか、と心配していた頃、岡田先生の<弱いロボット>について知りました。え、こんなロボット、どう使うんだろう?でも、それは全く新しいロボットと人間の関係性でした。
これからも、<弱いロボット>から目が離せません。
(7月幹事 橋本由香)
担当運営委員(幹事) 和智 久二夫 橋本 由香 藤原 勝